とりくみ

くらしを支える事業 ― 医科・歯科





病院・診療所数『 在宅療養支援病院・診療所が多数 』

200床未満59病院のうち、38病院が在宅療養支援病院の届出を行っており、そのうち25病院は緊急往診や看取りが一定数以上ある強化型在宅療養支援病院です。医科診療所285施設のうち、216診療所(76%)が在宅療養支援診療所で、さらにその半数以上が強化型在宅療養支援診療所です(2021年3月末日現在)。

 

病床の内訳

地域包括ケア病床が、全国の医療福祉生協で2,456床になり地域の医療機関・介護施設と連携した在宅療養への支援がすすんでいます(2021年3月末日現在)。

一般病床(病院) 9,626
 (内) 緩和ケア病棟病床 243
 (内) 回復期リハビリ病棟病床 1,848
 (内) 地域包括ケア病棟病床 2,456
一般病床(診療所) 149
医療療養病床 1,870
介護療養病床 107
介護医療院病床 261
精神病床 384
病床合計 12,397

 

退院支援『 組合員の参加で自宅退院が可能に 』

退院患者に組合員のたすけあい活動や見守り訪問を紹介しています
(医療生協さいたま)

医療福祉生協の病院では、患者さんの了解のもと退院支援に組合員が参加するケースが増えています。退院後に組合員が見守りや、日常生活支援を行うことで自宅退院が実現しています。退院支援への組合員参加は、医療・介護専門職にとって「退院後の患者のくらしを支える視点」を実践的に獲得する機会となっています。


 

歯科『「食べられる口」づくりでくらしの質を高める 』

歯科医師・衛生士とリハビリ職が連携した口腔ケア

オーラルケアチームによる病棟での口腔ケア。チームは歯科医師・歯科衛生士・言語聴覚士・NST専門療法士で構成されています
(利根保健生協:群馬県)

病院のリハビリテーション担当部署に歯科衛生士を配属し、入院患者の口腔ケアにとりくんでいる医療福祉生協があります。
口腔ケアは入院初期からはじまります。歯科とリハビリの連携のもと、寝たきりの方には足の裏が地面につくように姿勢を整えることからスタートし、首や胸の筋肉をストレッチでほぐしたのち口腔ケアをおこなっています。


地域でオーラルフレイル予防を実践

あいうべ体操

歯科スタッフは「口の健康をすべての世代に」を合言葉に、予防活動に取り組んでいます。従来からの歯磨き指導に加え、最近はオーラルフレイルを予防する口の体操などを組合員や地域住民とともに実践しています。なかでも毎日実践できる「あいうべ体操」はとても好評で、多くの組合員が実践しています。


医科・歯科・介護の在宅連携

多職種による在宅往診の風景(きらり健康生協:福島県)

在宅医療では、医科・歯科・介護の多職種連携で口腔ケア・口腔リハビリテーションをすすめることによって、誤嚥性肺炎などの予防と栄養状態の改善にとりくんでいます。


 

くらしを支える事業 ― 看護・介護・食事・住まい





看護『 急性期から在宅医療まで 』

急性期病院から診療所・訪問看護ステーション・介護事業所などで、12,000人を超える看護職員が働いています。全国ネットワークを活かした相互受入れ研修やクリニカルラダーを活用し、学びあい、育ちあいを実践しています。

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クリニカル・ラダーを活用
医療福祉生協連は看護師向けに「医療福祉生協のクリニカル・ラダー」を作成・運用しています。2020年度には「診療所クリニカルラダー」を作成し、運用を開始しました。クリニカル・ラダーを通じて一人ひとりの看護師の能力を適切に評価し、看護師としてのキャリア開発を行っています。

クリニカル・ラダーは5段階で構成されており、それぞれのレベルで看護実践・コミュニケーション・倫理などの評価項目が設定されています。
クリニカル・ラダー評価者育成にとりくむと共に、看護管理者を対象にマネジメント・ラダーを運用しています。

認定看護管理者・認定看護師が活躍

全国の医療福祉生協で、認定看護管理者28名、専門看護師6名、認定看護師190名が活躍しています。急性期から在宅医療まで質の高い看護の提供をめざしています。



介護『 医療・介護・助け合いをつなぐケアマネジャー 』

全国の医療福祉生協では1,000名をこえるケアマネジャーが活躍しており、医療・介護事業と組合員の助け合い活動をつないでいます。ケアマネジャーと地域の組合員が、協同でくらしの困りごとの解決にむけて行動することが特徴です。医療・介護・組合員活動の連携を通じて地域包括ケアの実現に貢献しています。

ケアマネジャーと組合員の懇談会。くらしの困りごとを組合員の助け合いがカバーすることで、専門職の専門性が発揮されます(広島医療生協)

医療福祉生協で働く専門職と組合員が参加した地域ケア会議の様子。
実際のケースをケアマネジャーが報告、ICF(国際生活機能分類)を活用して生活行為の向上をめざした議論が行われています(姫路医療生協:兵庫県)

食事『 配食事業に安心を添えて 』

組合員が集まって料理をつくる「お食事班会」が盛んに行われています。地域購買生協と連携したとりくみや、注文を受けて組合員がお弁当を届ける、見守りを兼ねた高齢者専門宅配弁当事業を行っている生協など、それぞれの地域に応じた事業を実施しています。

「こんにちは、お弁当届けにきました」と組合員が届けるお弁当は見守りも兼ねています(ながおか医療生協:新潟県)


住まい『 人が集まる住まいに医療・介護のバックアップ 』

全国でサービス付き高齢者向け住宅24、有料老人ホームなど28か所が運営されています。ほとんどの住宅には、診療所や訪問看護ステーションなどを併設し、いざという時の安心を提供しています。
小規模多機能型居宅介護支援事業所などを併設した「拠点型サービス付き高齢者向け住宅」もあります。
新潟医療生協が運営する、医療・介護・集いのひろば「なじょも」には、サービス付き高齢者向け住宅、診療所、デイサービス、ショートステイ、産直市場、大浴場、学童クラブ、交流スペースなどがあります。

住まい・医療・介護のひろば「なじょも」(新潟医療生協)

「なじょも」内に設置されている学童クラブ


くらしを支える人を育てる ― 学び・人材育成





家庭医療専門医(総合診療医)の育成

医療福祉生協連は、家庭医療専門医の育成を進めるために、2005年に家庭医療学開発センター(藤沼康樹センター長 Centre forFamily Medicine Development:CFMD)を開設し、教育・研究活動、診療所開発を行っています。
CFMDは、家庭医療専門医の育成と研究活動を中心に、主に5つの活動を行っています。

CFMDの研修風景

        

  • 日本プライマリ・ケア連合学会認定新家庭医療後期研修プログラムを運営
  • 日本専門医機構の総合診療専門研修プログラムを運営
  • 後期研修プログラム終了後、さらに学び続けたい医師のためにフェローシッププログラムを運営
  • 家庭医療学の研究
  • 家庭医療の実践を行う診療所の開発と診療所に勤務する看護師の育成


 

地域を支えるプライマリ・ケア診療所看護師を育成

在宅医療の進展にともない、診療所や病院外来における看護の役割も変化してきます。家庭医療学開発センター(CFMD)では、予防医療やヘルスプロモーションを地域に発信していく役割や多職種連携の要となる役割など、従来の看護にとどまらない役割を身につけた地域を支えるプライマリ・ケア診療所看護師を育てる研修を実施しています。

プライマリ・ケア診療所看護師研修の様子


働きながら介護福祉士をめざす人を応援

医療福祉生協連 介護福祉士実務者研修通信課程
医療福祉生協連は働きながら介護福祉士をめざす人のために、2016年から介護福祉士実務者研修通信課程を開講しています(雇用保険の一般教育訓練講座指定)。2020年には、全国の医療福祉生協の会場でスクーリングが実施され、159名が受講しました。講師陣は総勢307名。全員、医療福祉生協の現場で働いている現役の介護福祉士・看護師です。近隣介護事業所で働く人々も受講可能で、地域の介護人材育成を支えています。

スクーリングの様子(医療的ケア)。講師は現役の看護師がつとめています。


組合員と職員がともに学びあう 組合員活動交流集会

全国から年に1度組合員・職員があつまり「組合員活動交流集会」を開催しています。フレイル・オーラルフレイル予防、ボランティア、居場所(たまり場)づくり、他団体連携、地域コミュニティとのかかわりなど、組合員活動について幅広く交流しています。

学習講演会の様子。
真剣に聞き入ります。

分科会の様子。
組合員と職員がともに学びあいます。


約90コースに1万人以上が受講する「医療福祉生協連の通信教育」 

医療福祉生協連は、組合員・職員に学びの場を広く提供しています。全国の医療福祉生協は「医療福祉生協連の通信教育」にとりくんでおり、毎年1万人以上が受講します。医療福祉生協の基礎を学ぶコースや資格対策、管理者向け経営分析、コミュニケーション能力を高めるコースなど、開講コースは全部で約90コースあります。

 

「おたがいさま」を合言葉に ― 助け合い





つながり・居場所・助け合いで困ったを解決

全国の医療福祉生協では、「対面やインターネット(SNSなど)を使ったつながり」「居場所づくり」「日常生活圏域での助け合い」を通じて、だれもが住みやすい地域づくりに貢献しています。合言葉は“おたがいさま”です。

 

インターネット(SNSなど)を使った新たなつながり

新型コロナウイルス感染症の影響で、対面して集まる班会や支部での様々な活動が難しい状況が続いています。
感染予防対策を徹底し、工夫しながら活動を継続する中で、インターネット(SNSなど)を使った新たなつながりづくりも始まっています。対面の集まりをオンラインの集まりが補完することで、より柔軟なつながりづくりを目指しています。

オンラインリモート班会での健康講話の様子。
〈岡山医療生協〉

アプリによる支部活動。
〈医療生協やまがた〉


居場所づくりで安心づくり(2020年度末 1,152か所)

居場所づくり活動は、空き家を借りたり、事業所のスペースを利用したり、組合員の自宅や公民館を利用するなどして行われており、お茶会・食事会、健康づくり活動、おしゃべりなど、人と人をつなぐ場として広がっています。居場所の中には、介護保険法における総合事業の一般介護予防事業や通所B型に登録されているところもあります。
高齢者のみならず、若い世代にとっても孤立が大きな生活上の困難となっている現在、気軽に足を運ぶことができる居場所づくりは、人と人とのつながりによって成り立つ生活協同組合の本来の活動です。

元教員や大学生ボランティアも協力して学習支援。

〈みえ医療福祉生協〉


自分たちでできることは自分たちで 日常生活圏域での助け合い

雨どいの掃除をしている様子。〈北医療生協:愛知県〉

くらしの困りごとの解決に向けて「自分たちでできることは自分たちで行う」ことを大切にしています。組合員が必要なもの・仕組みを自分たちの手でつくりだすことをサポートし、地域コーディネートを担う職員が全国に配置されています。
全国の医療福祉生協では、有償・無償の助け合い活動が行われています。2020年度は5,891名がのべ4万3,759回の助け合い活動を実施しました。買い物・病院への付き添い・草むしり・除雪・宅配便の荷解き等、くらしの「困った」を「おたがいさま」で解決しています。


 

支えられたり支えたり 子ども・子育て支援

子育てサークル・学習支援(無料学習塾)・食事会(子ども食堂)など、全国80か所で子ども・子育て支援の活動が行われています。支える側・支えられる側という一方的な関係ではなく、子どもを中心とした人と人とのつながりが、まちづくりにつながっています。

 


つながりで明日をもっと元気に ― 健康づくり・フレイル予防





健康づくりでつながりづくり

医療福祉生協では、組合員が、医師・看護師・セラピスト・歯科衛生士・介護福祉士などの専門家と一緒に血圧・体脂肪・尿チェック(尿蛋白、尿ブドウ糖、尿潜血)などの健康チェックを実施したり、病気の予防や健康づくりについて学ぶ「班会」を開催しています。
2020年度はのべ92,269回の班会に439,534人の組合員が参加しました。「くらしの場で複数人が集まって、専門家の力を借りつつ主体的に行う」。これが医療福祉生協の健康づくりの特徴です。
健康づくりのリーダー育成を目的にテキストを使って保健学校を開催したり(39回実施、358名卒業:2020年度)、歯磨きセミプロ、運動サポーター、食のアドバイザー、禁煙アドバイザーなどを養成しています。

班会の様子。保健学習をした組合員が自分たちで健康チェックを実施します
(宮崎医療生協)

保健学校の卒業生は保健委員として登録され、まちかど健康チェックで活躍しています(長野医療生協)


11万人以上がとりくむ健康チャレンジ

医療福祉生協は、組合員がめざす健康習慣として「8つの生活習慣」と「2つの健康指標」を定め、健康習慣の具体的実践として禁煙や運動などを一定期間実施する「健康チャレンジ」にとりくんでいます。2020年度はコロナ禍で様々な活動が制限された中でしたが、11.6万人が健康チャレンジに参加しました。
健康チャレンジは数多くの健康づくりコースからいくつかを選んでとりくみます。友人・職場・家族などのグループでエントリーして、実践を毎日記録し結果を報告します。
健康チャレンジの多くは、自治体の後援を得て実施しています。

医療福祉生協は地域の協同組合と連携し「健康チャレンジ」にとりくんでいます。自治体や教育委員会からの後援を得て、小学校・中学校でチャレンジシートが配布されている地域もあります。

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おいしく たのしく みんなで減塩

自治体主催の「うつのみや食育フェア」で減塩を普及(栃木保健医療生協)

健康づくりの一環で「すこしお生活(すこしの塩分ですこやかな生活の略称)」をすすめています。「すこしお生活」は、医療福祉生協の健康習慣で定めた一日の塩分量6g未満を無理なく習慣化していくことをめざした減塩活動です。
ひたすらに減塩を実践する活動ではなく、班会など多くの人たちが参加する場で味覚を大切にし、「おいしく たのしく みんなで減塩」を実践しています。


 

24時間蓄尿塩分調査を実施

医療福祉生協連では、5年に1度「24時間蓄尿塩分調査」を実施しています。「第8回24時間蓄尿塩分調査」は2020年11月に行われ、61生協、組合員2,116名が参加しました。第8回の調査では、蓄尿検体・質問表のほか、BDHQ(簡易式自記式食事歴法質問票)という調査方法を新たに加え、食塩以外の栄養摂取量についても調査を行いました。この調査結果は、「すこしお生活」推進のための戦略づくりに活用されています。

「第8回24時間蓄尿塩分調査報告書(ダイジェスト版)」は、
[調査・研究]よりご覧いただけます。


 

総合事業を活用してフレイル予防を実践

沖縄医療生協小禄北支部が行う「小禄はつらつ教室」は、那覇市の介護予防・日常生活支援総合事業の住民ボランティア主体通所型サービス(B型)に位置づけられています。地域包括支援センターとの調整等を行うコーディネーター、事業運営に係る支援を行う住民リーダーの両方を組合員が担当しています。全国では、組合員により通所・訪問あわせ9か所の住民主体型サービスが運営されています。歩いていくことができる範囲に、フレイル予防を中心とした小さな集まりをたくさんつくる活動が進んでいます。

 

 


世界の保健協同組合と ― 国際活動





イタリア、カナダ、韓国、マレーシア、ネパール、インド、スリランカ等、世界の保健医療協同組合との交流を深め、協同組合としての医療・介護実践を学びあっています。

 

海外から注目される医療福祉生協の活動

アフリカからの視察団を受け入れました(東京保健生協)

超高齢社会における持続可能な医療・介護のあり方のひとつとして、医療福祉生協が提供する組合員参加型の医療・介護サービスが注目されています。消費者である地域住民が資金を出し合い医療・介護事業を運営するという仕組みは世界でもめずらしく、組合員による班活動・健康づくりとあわせ海外から注目されています。


 

国際団体の会長・副会長国として貢献

APHCO総会にて。中央が藤原高明前代表理事会長理事。

国際協同組合同盟(International Co-operative Alliance:ICA)は1895年に設立され、後に国際連合に登録された世界最大のNGO(非政府組織)です。医療福祉生協連は、その保健部門である国際保健協同組合協議会(IHCO)の副会長国として、また、アジア・太平洋地域保健協同組合協議会(APHCO)の会長国として、世界の保健協同組合をリードしています。


 

健康づくり活動を推進する人材の育成

健康づくりにとりくんできた医療福祉生協のノウハウを諸外国に伝える活動にとりくんでいます。医療・介護専門職、組合員それぞれの立場から積み重ねてきた経験を伝え、住民主体の健康づくりに貢献しています。

行政職員と地域住民に健康づくり活動をレクチャーしている様子
(ネパール・キルティプル市)

小学校での歯科検診の様子
(モンゴル・ウランバートル市)


くらしの視点で健康なまちへ ― 復興支援





全国の医療福祉生協は、被災住民のくらしを支える活動に継続的にとりくんでいます。避難所や仮設住宅、被災者の自宅など様々なところを訪問し、健康チェックや健康体操などの保健予防活動を通じて、くらしの相談活動を行っています。

持続可能な開発目標(SDGs)と協同組合

協同組合は、これまでも貧困や飢餓などの問題にとりくんでおり、国連によりSDGsを達成するための重要なステークホルダーのひとつとして位置づけられています。SDGsの達成において協同組合が果たす役割に、国内外で大きな期待が寄せられています。


Blue Earth Project「海岸清掃」の様子。〈出雲医療生協:島根県〉